バーテンダーというお仕事

  • 2020.01.28 Tuesday
  • 01:13

バーテンダーなんて因果な仕事をしていると「最近、何してるの?」なんてよくお客様に聞かれます。

 

 そりゃまぁ、毎日若い女の子とデートですよ。一緒に散歩してランチしてお昼寝して充実した毎日を過ごしています。さすがに毎日毎日しつこくおねだりされると疲れることもありますが。

 

ま、犬ですけどね。

 

 職業病って誰にでもあると思います。バーテンダー全てがそうではないですが、僕の場合オフの時間はとにかく人を避けたい。オフタイムは家族か、ほとんど気を使わなくてよい気心知れた人としか関わりたくないのです。人間と違って余計なことべらべら喋らないワンちゃんは最高のパートナーです。「ボール投げて!」「散歩行く!」「おなか空いた!」「パパ寝るの?じゃあ一緒に寝る!」感情を全力でぶつけてきますから可愛くて可愛くて。とはいえ犬なりにたまに気を使ってるのが分かると、それがまたいじらしくて可愛いのです。


 

 まあワンちゃんの話はまた別の機会にするとして、今日は犬としか関わりを持ちたく無くなるほどストレスフルなバーテンダーのお仕事の話でも。バーテンダーと言えば酒を売っている仕事の人かな、ぐらいはご存知の方も多いでしょうが、その仕事の詳しい中のことはあまり知られていないのではないかと思います。バーと一言に行ってもダーツバーやらガールズバーやら色んなバーがありますし、店によっても事情は様々でしょうから、あくまで当店を基準とした話です。

 

・長いアイドルタイム

 「今日お客さん少ないね。さっきの居酒屋は満席だったよ」とかよく言われます。夜の街を徘徊している生きている人間ならほぼ100%食事はしますが、バーに来て酒を楽しむ人はそのうちのおよそ3%未満です(個人調べ)。だから街に食事の店はいっぱいあってもバーって数えるほどしかないのです。当然、居酒屋に比べて客数は少なくなります。当店がいつ来ても毎日賑わっていたら年に1ヶ月間はホリデー取るし、テスラ買って自動運転で通勤してますわい。去年は長期休暇取ってないし、今日も明日も自転車通勤ですよ。

 

 なので自然とお客さんがいない待ちの時間が長くなります。スタッフを雇っているときは世間話か身の上話の相談に乗っているか(それなりに気を使います)。スタッフがいないときは完全自由なので、こうしてブログの記事書いているか事務仕事しているか酒の勉強しているか掃除しているか。というのはたまにぐらいで、たいていYoutube見ているかネットサーフィンしているかです。7時間の営業時間のうち実際にお客さんがいて可動している時間は短いです。以前、気が付いたらゴルゴ13を4冊読んでたこともありました。なんとも非効率な仕事です。

 

 

・顧客の99%が酔っ払い

 稀に車で来ているとか、会社の飲みで来たけどそもそも酒が飲めない、という方もいます。それ以外は当たり前ですが顧客の99%は酔っているか帰る頃には酔っているかです。一般社会でそんな奇異な仕事はそうそうありません。酔っ払いという生き物は好き勝手喋るわ、声は大きいわ、グラスは倒すわ、ろくなことがありません。

 

 仕事しているとじきになれますが、未だに慣れない、というか自分が歳を取ってより苦手になってきたのは声の大きい人。そして上記のとおり日頃はワンちゃんと静かなスローライフを送っているので、とにかくうるさい環境が苦手。先日もプライベートで居酒屋に行ったのですが、店は雰囲気も料理も良いの店なのに後ろの席の団体がうるさくて直ぐに店を出ようかと思いました。声が大きい人がいると周りは誰も得しない。

 

 自分の店でも照明を暗めにして雰囲気作ってみたり、BGMの音量を抑えてみたり、ジャケット羽織って大人の店感出してみたり、色々と試してみましたがなんの効果も無し。昔は「もう少し小さな声でお願いします」なんて注意をしていたのですが、静かになるのはもって5分。効果があった試しがないので最近は諦めて嵐が過ぎ去るのを待つのみです。一番いいのはお客様から「君らちょっとうるさいよ」と注意してくれると一番効果があるのですが、なかなかそんなこと言える人はいません。

 

 自分も20代の時はお店や人様にご迷惑をお掛けしたことも1度や2度では済まないですが、齢30も過ぎるころには高級なお店やホテルにも足を運んだりと色々と経験も積んで大人としての振る舞いを心がけるようにしています。酔っているときはなおさら気を付けるようにしています。他人を不快にさせないことがマナーなのです。Manners maketh manですよ。

 

お願いだから普通の声で喋ってくれ。バーテンダーという仕事をする限り一生付きまとうストレスです。

 

 

・覚えることは多いのに見返りは少ない

 酒について覚えることは多いです。バーテンダーはたいていウイスキーかワインかカクテルにハマって専門性を高めていくのですが、ウイスキーにハマると本当に沼です。

 

 まずはウイスキーが生まれて現在に至るまでの経緯を理解するために世界史の知識が必要です。

テイスティングのときにより深く理解をするために製法を詳しく理解しておく必要があります。この香りは製造工程のどの段階で発生する香りか、頭で把握しておくとテイスティングがより正確に行えます。ポットスチル(蒸留器)のシェイプも酒質に影響を与えるので、以前ポットスチル写真集なんてものも販売されていました。樽についてもバーボン樽だシェリー樽だと簡単に言ってもバーボンもシェリーも理解して、もちろん飲んで経験しておく必要があります。さらにポート樽だのワイン樽だのブランデー樽だのラム樽だの……。ウイスキーの勉強をしていたら結局ほとんどのお酒の知識が必要になります。

 蒸溜所の立地も把握しておく必要があります。地域特性や立地による特性があるので把握しておくとよりウイスキーの理解が深まります。

 

 生い立ち(歴史)、製造(化学)、立地(地理)、そもそも英国文化なので(英語)と学校のお勉強が案外役に立ちます。テイスティングは経験と記憶の繰り返しで、表現は理系より文系の人のほうが上手です。あとマーケティングや経済の知識があると何かと理役立ちます。

 

 それだけ頑張って勉強しても(実際は好きでやってるんで大して苦でもないですが)見返りは少ないです。たまに高級ウイスキーが売れるよりも、放っておいてもIWハーパーの水割りが大量に売れた時代のほうが売上も身入りも多かったです。その時代は僕は雇われの身だったので給料は変わらなかったですが。バブルの恩恵受けたかったなぁ。バーテンダーだってロスジェネですよ。


 

・色々知っておかないといけない

 お客様は年齢も職業も多岐にわたります。基本的に接客とは聞くのが仕事ですが、若いうちはまだしも、いい加減歳を重ねてモノを知らないと流石に話相手になりません。昔の有名クラブのママは毎日全社の新聞を読んでいたとか聞きますが、今なら毎日のスマホでニュースチェックは欠かせません。

知識欲の旺盛な人のほうが向いてるでしょう。

 

 

・腰を痛める

 立ちっぱなしの仕事なので、どんなに体を鍛えて気を使っていても1度や2度は腰を痛めます。僕の場合、25歳のときにスノーボードで転倒したときに腰の骨を剥離骨折して以来、少し調子が良くなっては仕事中に悪化してを繰り返し、腰痛には数年間悩まされました。最近では暇なときは椅子に座っている時間も長いので筋トレさえ怠らなければ腰痛はほぼ問題無しです。ただし腰が痛くないときは懐(売上)が痛いですが。


 

 バーテンダーという仕事を人に勧められるか?と聞かれたら速攻でやめたほうがいいと答えますね。心も身体も負荷大きいわ、効率悪くて儲からないわ、そもそも売上は景気にかなり左右されるわ。僕自身も「生まれ変わってもバーテンダーする?」と聞かれれば「1週間考えさせてください」と答えます。

 

 真っ先に悪い面ばかり思い浮かびますが、とはいえ普通に生きていれば関わることのない人と話ができるのも面白いし、酒で心のストッパーが外れた人の裏の部分を見るのも興味深いし、自分が美味しいと思っているウイスキーやお酒に共感してもらえたら嬉しいし、日々の売上に一喜一憂していると毎日がギャンブルみたいで楽しいし、なにより人と話をするということは人生最大の暇つぶしです。

 非効率なアナログ仕事で大儲けはできませんが、万事満たされているよりも少しだけ足りないぐらいが色々考えることや挑戦するとがあって楽しいものです。今のところ、そこそこ人生を楽しめて食っていければまあ良しとするか、ぐらいに考えています。

 

 当店でもバーテンダー募集しています。ちょっとだけアルバイトでやってみたいでも構いません。

女性は容姿端麗ナイスバディー、男性は若いとおじさんにマウンティングされるし、見た目が悪いと女性客に無碍にされるので、最低でも新田真剣佑並みのルックスが必要です。歴史、地理、化学、英語にある程度知識があり経済の話がちゃんとできて、食に興味がある方。できれば多趣味な方が良いですね。お酒の知識は現場で教えるので募集時には問いません。

あと時間も遅くなったりお酒を頂くこともあるので通勤は必ず徒歩か自転車限定です。

 

我こそはという方、ご連絡ください。お待ちしています。

(そんな人いるわけないよ)

 

 

バーテンダーといえばこの漫画が有名ですね。

僕は原作は読んでいないのですが、相葉くん主演の実写版は見ました。昭和の銀座のバーの雰囲気ですかね。実際の仕事はあんなにスタイリッシュではなく、けっこう泥臭いです。お間違えのないように。

 

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